トロント(カナダ)在住20年の筆者が、カナダ国内旅行やトロント市内を中心としたイベントで撮影した写真で綴るブログです。
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2013年10月12日土曜日

ユーコンで堪能した、カナダの秋オーロラ

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カナダのオーロラ鑑賞は、10月を過ぎると冬へと向うため天候が不安定になり、積雪が一段落する12月初旬まで一休み。カナダでは「冬になるときれいなオーロラが見える」というのは良く知られていますが、夜が長くなる晩夏から秋にかけてもオーロラ鑑賞は可能。
極北と呼ばれる地域では、夏の間太陽がしっかりと沈まない白夜が訪れます。白夜とは、夜になっても日が沈まない現象。オーロラは漆黒の夜空に現れる微弱な光、空が明るいと見ることができません。ユーコンの夏の日照時間は、もっとも長い6月の夏至には19時間とも言われているほどで、ほとんど日が沈まない計算になります。夜が来ないのであれば、いくらオーロラが舞っていても見ることができませんね。

私たちが現地を訪れた8月末はオーロラを遮るこの白夜が終わる晩夏の時期でしたから、ホワイトホースとドーソン・シティーの2つの宿泊地でオーロラ鑑賞の日程が組まれていました。しかしながら事前の予報では天気は曇りがち。カナダのオーロラはすでにイエローナイフで経験済みですが、晴れることを願ってユーコンに向ったというわけです。

【ホワイトホースでのオーロラ鑑賞】
ここでは都合3回のチャンスがありましたが、オーロラに出会ったのは最終日のこと。

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この日は暖房が効いた巨大なテントがある施設でオーロラ鑑賞が予定されていました。マイクロバスで市内のホテルを出発し、40分ほどで施設に到着します。女性ガイドの方が一人ついてくださり、20人ほどが入りそうなほど広いテント内では薪ストーブもあり、飲み物やちょっとしたスナック菓子なども用意されていて、大変快適でした。

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外に出て空を見上げると、多少雲は出ていたものの星空が美しく、天の川もくっきりと見えているほどでした。「星が降ってくる」と良く聞きますが、それはまさにこのことを言うのだと感じるくらいです。

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この日のオーロラは地平線のほうで強弱を繰り返しながらゆらゆらとカーテン状に揺れていましたが、強いオーロラの時はもっと高い位置に出るそうです。

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別な日には別荘タイプの施設に宿泊することもできました。残念ながら厚い雲に遮られてオーロラは鑑賞できませんでしたが、森の中に点在するキッチン付きのコテージからちょっと外に出るとすぐ夜空が見えるというユニークなセッティングは、今後人気が出そうです。

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というのも、オーロラ鑑賞のためには街の光が届かない場所まで行かなければなりません。ここは街から30分ほどの森の中にあるリゾート風別荘地で、夜になると街路灯もなく街からもかなり離れているためその心配もありません。

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今年になって、大きなガラス窓のあるオーロラ鑑賞専用のキャビンも作られ、その前にはキャンプファイヤーができる場所もあり、当日はせっかくなのでマシュマロ焼きなどをしてひとときを過ごしました。

【ドーソン・シティーでのオーロラ鑑賞】
「オーロラ・オーバル」と呼ばれ、オーロラ出現率が高いエリアの真下に位置するドーソン・シティーはホワイトホースから約600キロ北に位置しています。ここでは街なかからもオーロラは見られるようですが、定番ポイントとしてオススメの「ドーム・サミット」と呼ばれる山頂へ連れて行っていただきました。

ダウンタウンから約30分ほどを山頂まで続く道路を上がり、到着すると目の前にはお椀を逆さにしたような「ドーム型」の小高い丘がさらにありますので、そこを上がります。立ってみると周りは障害物がまるでない、360度がぐるりと見渡せる絶景ポイントでした。

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これまでの日程で、ユーコンの豊かな自然を経験してきました。トゥームストーン準州立公園では、度肝を抜かれるような「絶景紅葉」を目の当たりにし、ゴールドラッシュの峠越えルートを山岳鉄道で走ってみると、雄大な景色が一面に広がります。ユーコンのオーロラ鑑賞は、ユーコンのキャッチフレーズ「Larger than Life」に表される大自然のスケール感が素晴らしいものでした。
上の写真は日が沈むのを待っている時に撮った一枚ですが、中央下に見える湖のようなユーコン川が夕暮れとともに青く輝き出した時には、思わずため息が出てしまったくらいです。

日没と共に現れるこの青は「ブルー・モーメント」と呼ばれる特別な現象で、地球が宇宙にぽっかりと浮いていることを思わせる神秘的な色が空に現れる瞬間です。
個人的な考えですが、オーロラは見え始める時が印象的でとても好きです。まるで舞台に緞帳(どんちょう)が上がり、スポットライトを浴びた主人公が闇からステージに浮かび上がる時のよう。ドーソン・シティーでの秋オーロラは、日没がかなり遅い(深夜12時頃)ためなかなか始まりません。しかしこの日は、そんな待ち時間でさえユーコンのブルー・モーメントに浮かぶ無数の星を前座にオーロラを待つという、贅沢な時間を過ごしていました。

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上の写真は青く染まる夜空に浮かび上がった天の川。完全に日が沈む直前から天の川が見えている、というのも生まれて初めての経験でしたが、画面左端の地平線沿いにかすかにオーロラが出ていますね。

夜中の12時を過ぎる頃になり肉眼でかすかに見える弱い光から始まったこの日のオーロラ。早速薄くグレーに見えている方向にカメラを向けると、紫と緑がすじとなる虹のようなオーロラが出現し始めました。昼と夜が交錯する時間帯に見るオーロラは、なんとも感動的。漆黒の夜空にゆらめくオーロラもきれいですが、太陽が沈む瞬間を待っていたかのように登場した「虹色オーロラ」はまるで女神のスカーフのように妖しい光を放っていました。

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この日のオーロラは写真で言うと右側=北東方向から出始め、左手=南西方向へ伸びるようにして出現しました。それはまるで地平線から徐々に幕が開くように登場し、上手(舞台右)から出現した主役が下手(舞台左)に向かってゆっくりと歩いているかのよう。北の空(舞台天上)に現れた天の川も脇役として従えているようです。

そんなことを考えているうちに、ちょっと不思議な感覚にとらわれてしまいました。
オーロラは上空300キロ〜500キロで起きると言われていますが、地平線から立ち昇るオーロラを見ていると、そんなはずはないのに「自分がオーロラを見下ろすような」感覚に。ふわりと夜空に浮かぶオーロラを見下ろすように眺めつつ、天上に昇る天の川が天から降りてくる。目の前に広がる光景はこの世のものとは思えない、夢のような、言葉では表すことのできない圧倒的な神秘さが胸に迫ってくるものでした。

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夜中の12時を過ぎ、ようやく空がブルーから漆黒へと変わり始める頃、アーチ状に美しく東西を結んでいた弧が少しずつ揺れ始め、今度は上下に広がりながら天上から降り注ぐカーテンへと形を変えててゆきます。良く見ると、筋となったカーテンは緑と紫がストライプ状に重なるもの。こういうカーテンを見たのも初めてでした。

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眼下のユーコン川を見ると、闇夜で見えないはずの川面がオーロラの光で輝いています。それほど強いオーロラが、踊るように夜空を舞っていたことになります。山の上から「オーロラを見下ろす」ように始まったこの日の虹色のオーロラ。最後は「天上から降り注ぐ」カーテン状へと変化し、ユーコン川を照らしながら大きく渦を巻いては広がり、強弱を繰り返しながら私たちが現場にいた午前3時すぎまで舞い続けていました。
滞在期間中に、こんなにダイナミックな自然を背景にしたユーコンのオーロラを存分に味わうことができたのは、本当に幸運でした。私たちがいた場所は風よけとなる場所がないため、秋といえども体感温度は日本の真冬並み。足元から上がってくる冷気を感じながら、3時間、4時間と立ち続けていた時間は、感覚的にはあっという間に過ぎ去ったように思い出されるのも不思議なことです。

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私自身、昨年初めてイエローナイフから始まったオーロラとの出会いは、これで4度目になります。振り返ってみれば「4度も」と思うのですが、その発端が、気まぐれに日本のテレビ番組でオーロラの特集を見たことから始まったことを今更ながら不思議に思うものです。

私がトロントに来た17年前は、日本との連絡は通話料の高い国際電話とFAXが全盛。インターネットが普及するまでにはまだ数年を要した時代でした。当時2軒あった日本人経営の「日本食料品店」に置いてある週刊の日本語新聞とレンタルビデオが貴重な日本の情報源。日本のどこかで番組録画されたビデオカセットが店頭に並び、1カ月遅れでレンタルして見るのが当たり前でした。そんな当時の暮らしのこと思い出すと、インターネットと日本の番組を24時間放送しているケーブルテレビがある今とは情報量が雲泥の差です。

今から2年前の2011年の秋のこと。NHKのBSで放送された番組「体感!グレートネイチャー オーロラ爆発を追え ~カナダ極北 神秘の光~」がケーブルテレビで特別番組として配信されました。もともとドキュメンタリーが好きで何気なくこの番組にチャンネルを合わせたというのが正直な所です。しかし番組の最後になってようやくテレビに映し出されたオーロラは、衝撃的でした。今回同行したメンバーの中にテレビのプロデューサーをしている方がおられたのですが、オーロラを撮るためには特殊なテレビカメラが必要で、世界でも数台しかないものをNHKが持っているのだとか。
今となっては記憶も定かではないのですが、番組はオーロラが見えるポイントを探しながら撮影スタッフが最後の望みを託して向ったのがドーソン・シティーだったのですね。印象に残ったのは、ラップトップに表示されるデータを元にオーロラの出現を予想するカルガリー大学の専門家のアドバイスを受けた撮影スタッフが、現地の人の道案内で雪が舞う中をひた走り、雪で覆われた見晴らしの良い丘のような場所にカメラを構えて待つと、最後の晩にようやくオーロラが出現した、という番組のストーリーでした。
こんなに大変な思いまでしても見たい風景というのはどんなものなんだろうと、むくむくと好奇心が湧いた時のことはいまだに覚えています。そして翌年の2月、私は妻を連れてイエローナイフで生まれてはじめてオーロラを見た、というわけです。

今回の旅で共に行動した参加者の中には初めてオーロラを見た方々がおられましたが、普段の生活に戻りふと思い出すと「夢のようだった」と感じ、「夢よ再び」と思われているようで、それはとても良くわかります。確かにオーロラには、なにか惹き付ける神秘的な魅力があると感じます。そこから実際に行動を起こすまでにはハードルがあるにしても、私の場合はテレビ番組がきっかけで、そこから秋と冬という違う季節、イエローナイフで2回、ホワイトホースとドーソン・シティーでそれぞれ1回ずつ、違うカナダの街で都合4回もオーロラに出会うなどと、その時には夢にも思わないことでした。

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今回の旅の目的地のドーソン・シティーで、あの撮影スタッフがオーロラを見たのと同じ場所に私も立ったのかどうか、今になっては確認する術はありません。ですが、2年前あの番組を見たことがきっかけで始まった私のオーロラへの旅が、出会いとなった街ドーソン・シティーに導かれて行ったというのは本当に偶然の巡り合わせでしかなく、それだけに一生の思い出となったことは言うまでもありません。